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「自己資金」のことを知っておこう #専門家コラム

「自己資金」のことを知っておこう #専門家コラム

創業融資を申し込む際に、「自己資金」が重要だと認識している方は多いと思います。融資担当者は、自己資金の金額や総投資額に対する割合についてしっかりと確認しようとします。借入に依存して開業するよりも、自己資金が多いほうがリスクは低いという考え方があるからです。

私の経験では、飲食店開業希望者で「潤沢な自己資金を持っている」という人は少ないのが実態です。今回は、自己資金とは何なのか、少ない場合はどうすればいいか、といったことを解説します

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1.自己資金とは何か

自己資金は、「自分自身でコツコツと貯めたもの」というのが基本的な定義です。全財産のことではなく、持っている「資産」のうち、今回始める事業に投入する資金のことです。融資担当者に説明するときは、明確な証拠資料が必要になります。証拠資料とは、銀行の通帳、株式投資や投資信託など金融資産の書類です。

現金を封筒に入れて「これが自己資金です。タンス預金にしていました」といっても、信用してもらえません。どこからか一時的に借りたお金、つまり「見せ金」ではないかという疑いが払しょくできないからです。実際にタンス預金をしていたとしても、できるだけ早く預金口座に入金しておくことが大切です。

 

2.どれくらいの自己資金が必要か

最近は、起業家にとって喜ばしいことに、必ずしも自己資金が多くなくても融資が受けられる可能性が高まりました。日本政策金融公庫の融資制度における、自己資金の要件が大幅に緩和されたのです。

無担保無保証人の「新創業融資」は、かつて「自己資金が総投資額の3分の1以上あること」を要件としていました。たとえば、ラーメン屋さんを開業するのに600万円かかるとすれば、そのうち200万円は自己資金があって、残りの400万円が融資の上限ということです。

数年前に制度が改正され、自己資金は「10分の1以上」となりました。しかも、他のいくつかの条件をクリアしていたら、自己資金は0でもいいことになっています(とはいえ実際には、自己資金0で融資を受けられる可能性はかなり低いのが実態です)。

 

私が日本政策金融公庫の創業支援部署の担当者にヒアリングしたところ、「自己資金と事業の成否には必ずしも明確な相関関係はないことが分かってきた」とのことです。以前は「自己資金の有無が事業の成否を左右する」というのが金融機関の常識でしたから、大きくくつがえす発想であり画期的だと思います。

制度の条件が緩和されたことから、自己資金が少ない人でも融資を受けられる可能性は高まりました。

新創業融資について、もっとくわしく→ 日本政策金融公庫の「新総合融資制度」を利用する

 

先日、私が起業セミナーでこの話をしたところ、女性の参加者が「私でも融資を受けられる可能性があると知って嬉しくなりました」とおっしゃっていました。

その女性は、飲食店を開業したいのに、子供の学費の負担があり自己資金が少ないので融資を受けられないと思い込んでいたのです。具体的には、お店を開業するのに必要な資金が700万円ほどに対して、自己資金として使えるお金が150万円でした。つまり、自己資金の割合は、5分の1程度です。

私が具体的な内容を確認したところ、しっかりと練り上げられたビジネスプランだったので、不足分の550万円の融資を受けられる可能性は十分にあると判断できました。

 

3.自己資金が少ない場合の対処法



最近、日本政策金融公庫では、自己資金を幅広に見てくれるようになりました。若手起業家が純粋な自分のお金が少なくても、身内から出資してもらったお金も自己資金と同様に判断してくれるケースが増えています(必ずとはいえません)。

身内の方から出資をしてもらう場合、留意すべきことがあります。たとえば父親から出してもらう場合は、必ず預金口座に振り込みしていただき、通帳上に名前が出るようにすることです。現金で預かって自分で入金したら、どこからのお金か分からないからです。

また、融資担当者に対して、父親の名前、住所、不動産の有無、職業などについても具体的に説明しておくことが有効です。なぜなら、父親が出資する資力がある人物だという証拠になるからです。融資担当者は、父親が不動産を持っているなら登記簿を調べるなど、裏付け調査をするのです。

このように、自己資金が少ない場合は、身内からの支援を依頼することも検討してください。

 

まとめ

融資における自己資金の要件が緩和されたとはいえ、開業直後のことを考えると、借入依存の計画だと余裕がないのは事実です。

「開業前にできるだけ多くの自己資金を貯めるべき」というのは正しい考え方で、審査においても重要なポイントであることには変わりないと認識しておいてください。創業融資を申し込みするなら、総投資額の3分の1程度の自己資金を貯める努力は必要です。

でも、そこまでない場合でも、これまでの経験や計画の内容などが評価されたら、希望通りの融資を受けられる可能性はあります。まずはあなたの事業計画をしっかりと練り上げてみてください。

 

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記事を書いた人

上野 光夫 氏

株式会社 MMコンサルティング 代表取締役・中小企業診断士

1962 年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に 26 年間勤務し、主に中小企業への融資審査の業務に携わる。3万社以上の中小企業への融資を担当した。融資総額は約 2,000 億円。

2011 年4月にコンサルタントとして独立。起業支援、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動している。資金調達サポートでは、年間約 100 社の融資を成功に導いている。リクルート社『アントレ』などメディア登場実績多数。

主な著書

『起業は1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)
『「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣』(明日香出版社)
『事業計画書は1枚にまとめなさい』(ダイヤモンド社)


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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